第1章「におい」を知る

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においは、健康のバロメーター。
各メディアで話題の日本人はなぜ臭いと言われるのか』

「はじめに」「おわりに」を完全無料公開。
各章の一部も無料公開致します。

第1章は、ニオイフェチの著者が、ムフムフ言いながら書いたニオイと嗅覚にまつわる総論です。
読書としては、「第1章が一番興味深かった!」という声もたくさん。
体臭・口臭への理解する為に、まずは、濃厚なニオイの世界の深みにはまりましょう。

書籍の目次

はじめに――実は、臭い! ? 残念な日本人
第1章 「におい」を知る
第2章 「臭う」は、不健康
第3章 「口臭」の正体と、その対策
第4章 「体臭」をコントロールする
第5章 「香り」のデザイン――自分も周りも快くする
おわりに

第1章 「におい」を知る(一部無料公開)

においとは何か

においとは、嗅覚で感知できるあらゆる刺激の総称である。

私たちを取り囲む空間には、常に様々なにおいがあり、無臭の空間など、まず存在しない。また、無臭の人も、まず存在しない。人や動物、植物、食物、物質などは、みんな特有のにおいを持っている。

最近は、衣類用や室内用の芳香剤もブームで、天然のにおいだけでなく、人工的なにおいにも囲まれている。

におい物質の種類は、この地球上になんと、20〜40万種類もあると言われている。実用性のあるものだけでも2千種類もあるそうだ。

においは、知らず知らずのうちに、嗅覚を通して人の本能や潜在意識、情動を刺激している。

安心感、幸福感、嫌悪感、危機感、歓び、興奮、官能性、食欲など、理性では制御できない動物的な野生の反応を惹起する。

においとは、五感の中でもより動物的な感覚なのだ。

美味しそうな食べ物は、食べなくともにおいだけで、食欲をそそり、生唾が出てお腹がぐ~っと鳴る。また、近寄って初めて感じる異性の体臭によって、一気に欲望に火がつくことがある。

赤ちゃんは、母親の肌に接し、においに包まれて育つことで、心の安定を司るオキシトシンという神経伝達物質の分泌が良くなり、一生涯、心が安定した人間に育つ。赤ちゃんを抱いた母親の乳臭いにおいは、大人になって嗅いでも、ほんわかと温かく、不思議な安心感が生まれるものだ。

情報入力端子としての五感

五感とは、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の5つの感覚だ。

これらの感覚は、動物がこの世界の情報を脳というコンピュータにインプットし、認識するための情報入力端子だ。つまり、この世界を認識するためのツールである。
その情報は、全て、感覚神経によって脳の各領域に送られる。ここで、その情報と、蓄積されている過去のデータを比較検討し、情報を精査し、判断し、認識する。
そして、感情や思考が生まれる。その結果、出力端子である運動神経や自律神経を通して、筋肉や内臓・内分泌器官などが動く。

人は、五感を通して世界と出会い、感じ、考え、そして、行動し、人生を営んでいるのだ。

 

嗅細胞――におい分子がホウキのような嗅毛に付着する

多くの動物は、驚くほど嗅覚が発達している。人以外の動物の多くは、地面を這って生活するために、視覚が発達する必要がなく、遠くを見通せない。その代わり、においで餌を探し、敵の存在を察知し、最高の配偶者まで見つけることができる。

鼻の奥には、においを感知する嗅細胞と、嗅細胞から伸びてホウキのようににおい分子を絡めとる嗅毛がある。ちなみに嗅毛は、鼻毛とは違い、目には見えない(〓図〓)。

嗅細胞や嗅毛の数が、動物と人の嗅覚の性能の違いだ。

人では嗅細胞は約500万個で、嗅毛は1細胞あたり十数本だが、犬は約2億個の嗅細胞を持ち、1細胞あたり数十本の嗅毛を有している。

におい情報を感知する嗅覚受容体も、人では350種類だが、ネズミや犬では1000種類だ。1つの受容体は複数のにおい分子を感知でき、また、1つのにおい分子は複数の受容体を刺激するので、組み合わせを考えると、20〜40万種類ものにおい分子を全て認識できる計算になる(実際には、全て完璧には嗅ぎ分けられず、もっと曖昧に感じているのだが)。

たとえば、犬。麻薬や爆弾、犯罪者を嗅ぎ分けるだけではない。最近では人の呼気や便、体臭などから、がんの存在を嗅ぎ分けるがん探知犬も登場するほどだ。

また、人は、緊張すると特有のにおいを放つので、ペットはそのにおいからも飼い主の心理状態を察知している。イライラしていると、愛犬や愛猫は寄り付かないし、本当は動物嫌いなのに、「かわいいね」などと取り繕って触ろうとしても、緊張臭が伝わって、噛みつかれる結果になる。

つづきの小見出し

  • ヒトの嗅覚――においで味わえる特権
  • 嗅覚は生存に直結している
  • においは、脳で感じる――赤ちゃんは便を臭いとは思わない
  • においは、野生の脳を刺激する――動物の最も重要な判断材料
  • 扁桃体と嗅覚と、サイコパスの関係
  • 臭いにおいは「危険」――引き起こされるストレス反応
  • プルースト効果で、忘れられない人になる――においは潜在意識に入り込む
  • においの好き嫌いは、遺伝子の相性だった
  • においの判断の社会性――学習効果で好みも変わる
  • 自分のにおいには気づけない理由
  • 日本人の女性は、においを感じやすい
  • においの特徴――姿を隠す、混ぜると変化する
  • 不潔とにおいの世界史
  • 臭くて不衛生な時代がもたらした「香水の文化」
  • 繊細に嗅ぎ分けてきた日本人
  • においと日本の歴史
  • 都市の無臭化は美徳か
  • 清潔・消臭への盲信――世界で禁止される殺菌成分の危険
  • 清潔になるほど増える免疫系疾患

第1章、以上です。

   

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この記事を書いた人

編集長/桐村里紗

内科医・認定産業医
tenrai株式会社代表取締役医師
治療よりも予防を重視し、ヘルスケアを「ライフスタイルデザイン」再定義し、最新の分子整合栄養医学や生命科学、常在細菌学、物理学などをもとに、執筆、メディア、講演活動などで、新しい時代のライフスタイルとヘルスケア情報を発信。 著書に、『日本人はなぜ臭いと言われるのか〜体臭と口臭の科学』(光文社新書)など。