娘が父親のニオイを嫌うのは遺伝子のせい!?だけではない

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世の中のお父さんには、大変恐縮だが、思春期を迎えた娘は、理屈抜きに父親のニオイが嫌いになる。
「パパと結婚する!」などと抱きついてきたあの頃の笑顔は、今や昔…。
しかし、それは必ずしもネガティブなニュースではない。
女性になろうとしているあなたの娘は、遺伝子に組み込まれたプログラムに従って、あなたの家系の立派な子孫を残すべく本能を開花させたに過ぎないのかも知れない。

女性は子孫繁栄遺伝子を嗅ぎ分ける

においの相性は、遺伝子の相性だと聞いたことはあるだろうか。
特に女性には、異性の体臭を嗅ぎ分けて、交配することで強い子孫を残すことができる遺伝的な相性を嗅ぎ分けているとされる。

強い子孫を残したい

女性が嗅ぎ分ける子孫繁栄遺伝子は、HLAと呼ばれる免疫に関わる遺伝子だ。
人のHLAは、父親と母親から受け継いだ2つの型が1セットとなり、A,B,C,DR,DQ,DPなどの抗原の組み合わせでタイプが分かれる。

HLAは、自分と他人を見分けるタイプ別の識別コードのようなもので、全身の組織の表面に発現して「これは、自分だ!」とラベリングしている。
臓器移植の際には、このHLAタイプの一致した臓器を選択しないと、異物として自己の免疫が排除してしまうことになる。

このHLAは、同時に、細菌やウイルスなどの外来の病原に対する免疫の働きに関連している。
外来の病原に対して強い免疫を持たないと、すぐにその家系は途絶えてしまうから、なるべく多様な外来の病原に対する幅広い免疫を持つ、強い子孫を残したい!
それが、動物のメスの本能だ。

HLAタイプとして、なるべく遠いタイプ通しがかけ合わさった方が、良い幅広い種類の外来の病原と戦える可能性が高まる。
だから、メスには、体臭を通して、HLAタイプを嗅ぎ分ける機能が備わっている。
自分と遠いタイプほど、良いニオイと感じ、性的な興奮を刺激する。
自分と近いタイプほど、嫌いなニオイと感じ、性的な興奮や満足も起こりづらくなる。

この時に、女性は、自分の父親から受け継いだHLAタイプを自己の基準として利用していることが明らかになっている。
だから、父親のニオイ=自分と近いタイプ=嫌い!
の方程式が成り立ってしまうのだ。

ロジカルに説明しても、思春期の娘からは反感を買うだけかもしれないが、家系の子孫繁栄のための喜ばしいプロセスと考えたら、少しは慰められるだろうか。

父親のニオイは「安心感」

一方で、真逆の研究もある(Nature Genetics :10.1038 / ng830(2002))。
男性に2日間着続けてもらったTシャツを女性に嗅いでもらったところ「一生涯嗅いでも良いニオイ」として選ばれたのは、女性が父親から受け継いだのと同じHLAタイプを持った男性のものを好む傾向にあったという。
この場合の選択基準は、「興奮」や「性欲」よりも「安心感」「心地よさ」という家族的なものだ。

総合すると、子孫を残すことを踏まえてセクシャルな気にさせるのは、HLAタイプが異なる異性。
安心感を覚えるのは、HLAが一致する異性。
と考えられる。
「あの人いい人だけど、付き合うのはちょっとね〜」などと判断される男性は、父親とHLAタイプが一致しているのかも知れない。
いずれにせよ、そことここがかけ合わさっても、強い子孫は生まれないのだ。

お父さんについては、必ずしも、「嫌い!」とは言われず、「お父さんのニオイ、安心する〜」といわれる可能性だってあるということだ。

オヤジ臭さ、言い訳却下

でも、これらは本来の自分自身の体臭の話。
それに加え、若い女性が100%嫌う汗臭や脂臭い男脂臭、年齢を感じさせる加齢臭、さらに口臭などを上乗せしていないだろうか?
これらは、本格的な不快臭となって、遺伝的と言い訳する間もなく嫌われることになる。
「オヤジ臭い!」などと言われないために、ライフスタイルを整えて、不快臭の原因となる体内環境・口内環境をクリーンにしておこう。

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この記事を書いた人

編集長/桐村里紗

内科医・認定産業医
tenrai株式会社代表取締役医師
治療よりも予防を重視し、ヘルスケアを「ライフスタイルデザイン」再定義し、最新の分子整合栄養医学や生命科学、常在細菌学、物理学などをもとに、執筆、メディア、講演活動などで、新しい時代のライフスタイルとヘルスケア情報を発信。 著書に、『日本人はなぜ臭いと言われるのか〜体臭と口臭の科学』(光文社新書)など。