線虫が早期ガンを嗅ぎ分ける検査が画期的

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ガンになった家族や友人について「何となくニオイが変化した」と感じたことがある人は多いのではないだろうか。
ガンになると特有の代謝系に変化することで、ガン特有の成分が発生し、それがニオイの原因になるのではと考えられている。
ただし、それは、人間の嗅覚には、正確には完治できない程度の微妙さだ。
生物の中でも類稀なる敏感な嗅覚を持つ「線虫」は、それを尿1滴で、9割の感度で嗅ぎ分ける。
「線虫って、寄生虫だろう!?」と恐るゝことなかれ。
エイベックスも参入した、線虫によるがんスクリーニング検査「N-NOSE」が、かなり画期的だ。

発見不可能な主要がんstage0から9割の感度で判定

これまで、発見が不可能だった超早期ガンを約9割もの高感度で発見できるスクリーニング尿検査『N-NOSE』(HIROTSUバイオサイエンス)が実用化に向かっている。
2018年6月、エイベックスと共同で、若者に対してがん検診啓発を行っていく「AVEX&HIROTSU BIO EMPOWER合同会社」を設立した記者発表が話題になった。
2020年の実用化を目指しているとのこと。

線虫は、がん患者の尿のニオイが好き

線虫博士の広津先生の長年の線虫愛によって生まれたこの検査。
線虫の特性として、健康な人の尿のニオイを嫌い、がん患者特有の尿のニオイを好んで寄っていく性質を利用したものだ。
線虫のニオイの好き嫌いによる誘引、逃避行動という極めて原始的な性質を利用した単純な検査だが、そこに着目できたのも広津先生の線虫愛ゆえと言えるだろう。
利用されている線虫は、その名もC.エレガンス。
博士を虜にするのに十分魅惑的な動きをするに違いない。

線虫は主要ながんをほぼ検知する

現在のところ、線虫が検知可能と発表されているがんは、以下の10種類。

胃がん、大腸がん、すい臓がん、食道がん、胆嚢がん、胆管がん、前立腺がん、
乳がん、肺がん、盲腸がん

成人が経験する主要のがんをほぼカバーしている。
これまで画像検査では、ある程度の大きさの腫瘍しか発見が困難だった。
健診などでも測定される腫瘍マーカーは、かなり感度が低く、同社の報告では、がんのある患者で検査したところ、腫瘍マーカーCEAの感度:20.6%、CA19-9の感度:28.6%であったとのこと。
健康診断で、がんのスクリーニングのつもりで、血液検査や画像検査を受けても、特に早期がんは発見が困難だった。

そこで、線虫がヒーローになる可能性がある。

画期的な線虫がん検査は、メリットが大きい

線虫がん検査のメリットを挙げてみたい。

  1. 感度が著しく高い
    線虫の鼻は、あなどれない。
    検出可能なあらゆるstageのがんの平均感度は93.8%である。
  2. 超早期がんでも感度が下がらない
    stage0~Ⅰの早期がんでも、高感度に検出可能
  3. 苦痛がない
    なんと、尿1滴でOK。苦痛な採血も医療放射線被ばくのリスクもない。
  4. 安い
    低コストで実現可能で、現状の費用負担予定価格は8,000円程度を考えているとのこと。
    健診などと比較してコスパを考えるとお安いと言えるだろう。
  5. 早い
    検査は、尿を1滴落として、線虫が尿に寄りつくかどうかを見るだけ。
    1時間もあれば可能だそう。

がん検診の受診率は、5割を切っている。
早期発見早期治療であれば、がんは完治する時代だが、受診にはなかなかハードルが高い上に、検出率の低い早期がんはせっかく受診しても見逃される可能性だってある。
胃カメラや大腸カメラを飲むのは勇気がいるし、ほんのちょっとの採血だって強く感じる人もいるだろう。
検査のハードルは、なるべく低いに越したことはない。
それなら、がんのスクリーニングは、線虫にお任せしてはどうだろうか?

スクリーニング検査は線虫にお任せ

N-noseが社会実装されたならば、まず、がんのスクリーニング検査は、N-noseで。ということになる。
尿1滴を提出。
そして、異常なければ、かなり安心。
また、来年。
異常があれば、そこでいよいよ、従来通りの検査をすればいいわけだ。

2020年の実用化にかなり期待したい。

この話を日テレの番組収録で出川哲郎さんにしたところ、「じゃあ、家で飼えばいいの!?」と仰った。
その時は、「んなわけないやろ〜!」と思ったが、いやいや、確かに、家で飼っておけば、日々、尿をチェックしてもらえるかも知れないと思い直した。
未来は、家に線虫を飼う時代になるのだろうか?
出川さん、新しすぎます!
でも、きっと奥様に嫌われてしまいますよ!

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この記事を書いた人

編集長/桐村里紗

内科医・認定産業医
tenrai株式会社代表取締役医師
治療よりも予防を重視し、ヘルスケアを「ライフスタイルデザイン」再定義し、最新の分子整合栄養医学や生命科学、常在細菌学、物理学などをもとに、執筆、メディア、講演活動などで、新しい時代のライフスタイルとヘルスケア情報を発信。 著書に、『日本人はなぜ臭いと言われるのか〜体臭と口臭の科学』(光文社新書)など。